結び 健康いきいき職場づくりフォーラムの新しいミッションと活動への期待
1)健康いきいき職場づくりフォーラムの新たなミッション・ビジョン
新しい「健康いきいき職場づくり」の将来像を実現するために「健康いきいき職場づくりフォーラム」はどのように活動すべきでしょうか。検討会の議論を通じて、フォーラムのミッション(使命)・ビジョン(実現したい将来像)として、
「私たちは、従業員のウェルビーイングの実現に向けた個人・職場・企業での活動を幅広く支援し、従業員のウェルビーイングの実現に向けた企業活動を支援することを通じ、これらの活動により多くの企業が参画することを目指します。そしてそれらを通じ社会全体のウェルビーイング実現に貢献します」
を設定してはどうかと考えます。そして、その実現へ向け、フォーラムでは、「場」の拡大や、「主体」の拡大等の活動を進めるとともに、そのための実践支援を行っていきます。
2)重点的に進めるべきフォーラムの活動
フォーラムの活動としては、以下の3点について重点的に進めることを通じて、さまざまな形での社会実装を目指すことが今後の重要な役割になります。そして、ミッション実現のために、国や関連民間団体、有識者等との連携をさらに強化することも視野に入れます。
図表23:「健康いきいき職場づくりフォーラム」これからの取り組みイメージ
①普及・啓発の一層の促進
企業・職場・個人の各レベルへの学び・気づきの提供や、③で蓄積される良質な理論・事例の公開を通じた、活動の社会的な普及・啓発がこれまで以上に重要となります。その際には、メンタルヘルスを起点とした働き方や職場・組織へのアプローチというフォーラムの特質を考慮し、WHOの定義にある身体面、精神面、社会面の健康のうち、フォーラムにおいて蓄積が図られてきた精神面、社会面の健康、特にポジティブメンタルヘルスを基盤に置き、活動を展開します。また、第2章で述べたような、近年の環境変化の中での持続性や人材育成への関心を加味すると、SDGsやESG投資等の関連分野との連携も重要です。スコープの拡大に関連して、中小企業、地域等への浸透を図るための試みも必要となりましょう。さらに、身体面の健康や健康経営関連の取り組みについても、国や、同分野に知見を有する団体や有識者等との連携の強化も不可欠です。また、これらの活動を通じた啓発を図る上では、現行の「健康いきいき職場づくりフォーラム」というネーミングがそのままでよいのか、より共感を得やすい名づけがありうるのではないかという検討が行われることも考えられます。これらを通じた、より広範な普及・啓発活動が望まれます。
②取り組み手法の開発と実践支援
ウェルビーイングの実現を図る上では、それぞれのレベルに即した取り組み手法の検討・開発や提供を通じた実践支援が欠かせません。具体的には、セルフケア・ラインケアの手法、企業・組織内での取り組みを推進する人材の養成、ミドル・マネージャーへの新しいリーダーシッププログラムの提供、技術と連携したアプリケーション等による各レベルへの働きかけ、ストレスチェックやアセスメントを含めたデータの利活用、当事者意識の醸成や「ポジティブな逸脱」を促進するための組織開発手法の活用、そして経営戦略への組み込みの方策等、さまざまな実践事例~成功も失敗も含む~の整理等、方向性は多岐にわたります。
③研究のさらなる推進
「健康いきいき職場づくり」は、産業界、経済学、経営学、心理学、精神医学等の学際的な取り組みであるため、研究領域も多岐にわたります。その中でも、ウェルビーイングの定義や各レベルの活動における関係性や役割の整理、ウェルビーイング概念の精緻化、ワーク・エンゲイジメントとウェルビーイングの関係性、収益とウェルビーイングの関係のあり方、生産性と健康、生産性以外の評価指標の検討、簡便な測定指標の開発、実践を担保する持続的人的資源管理の検討、社会全体への浸透に向けた公共哲学等との連携、ひいては国際基準の検討等が想定されます。まずは、重点的な研究が必要となります。
もちろん上記は例示であり、より具体的な事項については、今後の活動に委ねられることになります。その過程で、特に継続的な研究を要するテーマについては、有識者による分科会等での検討も視野に入れ、その成果をフォーラムで公開することで各レベルへの働きかけや実践支援を行います。
これらの活動を通じ、「これからの健康いきいき職場づくり」のさらに具体的な検討と、各レベルでの実装を目指した活動を「健康いきいき職場づくりフォーラム」が主体となって担うことが期待されます。もちろん、この活動はフォーラム単体のみではなしえません。そのため、フォーラム参加組織や関連団体のコミット等を経つつ、広く社会的機運を醸成することが不可欠です。本報告書がそのきっかけとなることを願って結びといたします。