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2021年12月23日

2021年11月26日開催 定例セミナー「理論から見つめる健康いきいき職場づくりの新潮流」サマリーをアップしました!

2021年11月26日(金)、定例セミナー「理論から見つめる健康いきいき職場づくりの新潮流 ~経済学・経営学・臨床心理学の視点から~」を開催しました。本セミナーはオンラインで実施され、約40名の方々にご参加いただきました。
今回は、経済学・経営学・臨床心理学の各専門家にご登壇いただき、会社・職場・個人というマクロ・ミドル・ミクロのレベルにおいて、現在そして今後求められる健康いきいき職場づくりの新たな視点をご紹介いただきました。さらに、最新理論を組織運営に活用している実践事例を取り上げ、これからの健康いきいき職場づくりの向かう方向性を検討しました。

学習院大学経済学部 教授 滝澤 美帆 氏
「経済学から読み解く健康経営の意義」

※日本経済新聞グループにおける「スマートワーク経営研究会」調査データに基づき、ご講演いただきました。
 ご参考:日経「スマートワーク経営」調査日経スマートワーク経営研究会報告2021


 スマートワーク調査(※)および他調査の結果から、①働き方改革と健康経営の関係、②従業員レベルでの健康経営の認識・評価・理解と企業業績の関係、③健康経営と株価の関係の3点について、ご解説いただきました。

 ①働き方改革と健康経営の関係については、「長時間労働の是正」や「場所に関する柔軟性」といった施策が、睡眠やメンタルヘルスなどの従業員の健康を改善させる効果を持つ可能性が明らかになったそうです。「働き方改革であり健康経営の役割も果たす施策については、企業が取り組むべき優先度が非常に高い」とご提言いただきました。

 ②従業員レベルでの健康経営の認識・評価・理解と企業業績の関係については、健康経営に関する従業員の認識や評価が高いほど、また企業と従業員の認識のギャップが小さいほど、企業業績が高い傾向にあることが示唆されたとのことです。これらの結果から、「健康経営に取り組む場合には、多くの従業員を巻き込みながら、きめの細かい施策を運用することが重要である」とご提言いただきました。

 ③健康経営と株価の関係については、健康経営に取り組んでいる企業の株価指数が、TOPIXを大きく上回るパフォーマンスを示していることをご紹介いただきました。「企業にとって 健康経営は企業価値の向上につながる戦略であり、投資家サイドも健康経営を重視する投資活動を行うことが求められる」とご提言いただきました。


早稲田大学人間科学学術院 准教授 大月 友 氏
「健康でいきいきと働くためのマインドセット」

 冒頭、今の時代は「前例通りではなく、より柔軟に、社会の変化に合わせながらパフォーマンスを発揮していくことが求められる時代」であるとご指摘いただきました。
 そのようななか、働く人には「リスクを背負い、時には失敗をし、試行錯誤をしながらチャレンジすることが求められている」とし、「その際に自分の内側に出てくる不安や落ち込み、怒り、億劫さなどの“バリア”とうまく付き合っていく“心理的柔軟性”が重要になる」とお話しいただきました。
※心理的柔軟性とは
 個人が豊かで意義のある人生を送るために、今この瞬間への気づきとともに、避けられない苦痛は受け容れながら、自らの人生を進めるために必要なスキルを有している状態。

 次に、この心理的柔軟性を高める方法であるAcceptance&Commitment Therapy/Training(ACT:アクト)についてご紹介いただきました。
 ACTの強みとして、「メンタル面のプラス(Well-being)とマイナス(精神病理)をシームレスに捉え、攻めと守りの両方に対応可能な統合的なフレームワークである」ことをご解説いただきました。そのほか、産業領域のACTの効果やねらいについてもお話しいただきました。

 また、今年に数社のリーダー層を対象に実施した「心理的柔軟性向上プログラム(ACT)」の効果検証の結果についてもご紹介いただきました。なかでも高ストレス者のメンタルヘルス不調ならびにパフォーマンス向上に、一定程度の効果が認められたことをお話しいただきました。


東京都立大学経済経営学部 教授 高尾 義明 氏 「自律的に働く職場づくりに向けて ―ジョブ・クラフティング理論を手がかりに―」

 はじめに、自律的な職場づくりが求められる背景には、「働き方改革の推進」や「コロナ禍への対策」があるとし、それらの取り組みが進むなかで「自律的な働き方への期待」が高まり、同時に「コミュニケーションの希薄化」といった問題が生じたことが挙げられるとご指摘いただきました。

 それらを踏まえて、ここ数年に関心が高まっている「ジョブ・クラフティング」という考え方についてご解説いただきました。ジョブ・クラフティングとは、いわば「自分をひと匙入れること」であるそうで、「仕事の中に、自分の強みや考え方、大事にしている価値観を少し入れていくことで、仕事が自分のものになっていく」ことを指しているとのことです。

 ジョブ・クラフティングを促進するためには、①マネージャー自身による実践や“コーチング”への転換、②個々のメンバーの職務の“自律性”の向上(権限移譲)や、社会的サポートの向上が求められるとご解説いただきました。
 一方で、自律性を高めることで、かえって個人の負担が高まることや、チームとしてのまとまりをそぐ可能性もあることから、「ジョブ・クラフティングを促進しながらも、ネガティブな影響を最小化するマネジメントが求められる」とご提言いただきました。


日本生活協同組合連合会 通販本部 本部長 奈良 恵子 氏 「理論を現場としてどのように活用するか」

 コロナ禍を受け、テレワークの拡大やMicrosoft Teamsの導入などが進むなかで、自律・分散・協働型の働き方へと変化していくため、さまざまな側面から問題意識を持ちながら取り組んできたことをご紹介いただきました。

 まず、取り組みの第一段階として、職場に関するアンケートを実施し、新型コロナウイルス対応でどのような点を改善してほしいかについて、声を集めたとのことです。
 次に、そのなかでも意見が多かった「グループやチームとの連携」「方向性や方針が伝わるコミュニケーション」について、社内でチームを結成し、YouTubeや書籍などを活用しながら「理論や他社事例をとにかくたくさん調べた」そうです。
 それらを踏まえて、取り組み内容のアイデア出しを行い、効果や実現可能性などを得点化し評価をい、取り組む内容を決定したとのことです。

 取り組みを実施するなかでも、「試しにやってみて問題点を洗い出す」スタンスを重視されたとのことで、「Observe(見る)⇒Orient(わかる)⇒Decide(決める)⇒Act(実施する)」OODAループをご紹介いただきました。
 実際の取り組みとしては、1on1の導入、それに伴う研修(①1on1の実施方法や目的についての研修、②心理的柔軟性向上プログラムの研修)を行ったことをお話しいただきました。

 理論として学ぶことの効果としては、「理論があるからこそ、伝えやすく、情報を共有することができ、社内へ広がっていき、個人の中で体験と結びついて深まっていく」ことを挙げていただきました。
 「現場の課題を観察して、適用できる理論を学び、適用の計画を立てる」そして「素直にやってみる」、その後に「結果を評価してフィードバック・フォローアップする」、このサイクルを回すことが、環境変化の激しいなかでの組織対応に役立つのではないかとご提言いただきました。


質疑応答・ディスカッション・意見交換

 質疑応答・ディスカッションでは、「働く人や職場の問題は、さまざまな側面からとらえるべき学際的な領域である」とし、「さまざまな学問のエビデンスを相互的に活用していくことで、“理論”の社内展開が進むのではないか」といった議論が行われました。そのほか、「理論をそのまま自組織に持ち込むのではなく“ローカル化”することの重要性」などについても議論がなされました。

 グループでの意見交換では、「理論についてまずは自分から積極的に学ぶことの重要性」「イノベーションの成果の測り方」「健康経営をキーワードに社内を巻き込んで仲間を増やしていく視点」など、幅広くご意見をいただきました。

 最後に事務局より、各種イベントについてご案内し、本セミナーは閉会しました。

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