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イベント・セミナー(共通)イベント・セミナー(共通)健康いきいき職場づくりフォーラム 成果発表シンポジウム2016のサマリーを公開しました - 2017/01/17

去る2016年12月19日、東京・本郷の伊藤国際学術研究センター伊藤謝恩ホールにおいて、設立から数えて5回目となる、健康いきいき職場づくりフォーラム成果発表シンポジウムが開催された。当日は、350名を超す方々より参加お申込みをいただき、盛会となった。

今回のテーマは「健康いきいき職場づくりの経営効果を探る」。健康いきいき職場づくりの活動が、企業経営にとってどのような好影響があるのかを、経営者の視点、経済学の研究者の視点、そして現場の視点と、あらゆる角度から考える機会となった。

 冒頭、主催者代表として、公益財団法人日本生産性本部 理事の大川幸弘より、健康いきいき職場づくりの活動は、まさに生産性向上に直接的に影響を与えうる活動であることをお伝えした。続くフォーラム代表研究者の挨拶として、東京大学大学院 医学系研究科精神保健学分野 教授の川上憲人氏より、「健康いきいき職場づくり」が現在政府を挙げて進む働き方改革の具体策ついて答えが出せるものであること、また健康経営やストレスチェック制度の活用に対しても良い施策を提供できることが伝えられた。

基調講演には、帝人株式会社 取締役会長の大八木成男氏より、「『元気』を育てる経営文化」と題してお話をいただいた。講演の柱に、「『何でも見てやろう』(小田実著・講談社刊)と思える人材をどれだけ育成できるか、人生を生きて行く上で大事な好奇心を持たせられるか」、という視点を据え、高度経済成長時代は、誰もがこうした感覚を持ち得たが、現在のような低成長の時代ではなかなか難しいと言及。しかし、「何でも見てやろう」という精神があってこそ、自分をストレッチの効いた(多少ストレスのかかる)ゾーンに置くことができ、成長することができる、と訴えた。また、同社における事業開発の条件は①ビジョンとの合致、②収益性、③リスク、④人の4項目であるが、①~③の要因をクリアすればGoサインを出しがちで、人について見過ごすことがあると指摘。具体的な事業開発の失敗事例を挙げ、その失敗の原因は、「それをやれる人がいたかどうか」だった、と振り返り、企業活動における人材の重要性を説いた。昨今政府を挙げて進められる働き方改革の方針にも言及し、単に生産性向上を言うだけでなく、「何でも見てやろう」という人材を育成する、という方針を入れることが大切だと訴えた。大切なことは、①自己実現できるように当事者意識を持つこと、②狭いところに閉じこもらず多様な世界を見ること、③心の健康についてはお互いに勉強しながら工夫をしていくことである、と締めくくり、企業経営者の立場から、意欲的でポジティブな感情を持つことの大切さをお伝えいただいた。



基調講演をいただいた帝人大八木会長


続く講演として、「メンタルヘルスと労働生産性 ~社員の健康、働き方と経営効果との関連~」と題して、慶応義塾大学 商学部 教授 山本勲氏より講演いただいた。山本教授からは、「健康いきいき職場づくり」を「健康経営」に読み替え、1.経済学から見た健康経営の意義、2.何が「健康経営」に有効なのか?、3.働き方改革は企業業績にもプラスか?という3つの視点からお話しいただいた。1.の意義としては、生産性の概念における量から質への移行に際して、労働者としていかにスキルやヘルスを高めるかが重要だと訴えた。また、雇用の流動性が低い日本企業において、かつ人口減少社会が始まる中、社員を抱える企業が、(スキルよりもむしろ)ヘルスを維持していくことが必要となると整理した。一方で、日本企業における組織構造の問題として、働き方を決める経営や現場と、健康管理を主管する人事総務というセクションが乖離している点に言及し、これを企業全体の問題、経営戦略の問題として捉えることが必要であると訴えた。2.の何が有効か、については、パネルデータによる研究から、メンタルヘルスの悪化要因として、残業時間の中でも手当の支払われないサービス残業が統計的に有意であったこと、また突発的な業務が頻繁に生じる、周りの人が残っていると退社しにくい、といった職場要因が有意に影響していること、さらにメンタルヘルス不調者が増加した組織は個人のメンタルヘルスも悪化する傾向があることなどが伝えられた。3.の働き方改革への影響については、これをワークライフバランス施策の導入と読み替えた場合、現段階の研究では、中堅大企業、製造業、労働の固定費の大きい企業に対しては、TFP(全要素生産性)を高める傾向があることがわかっている。総合的に見て、雇用の流動性が低く、労働の固定費が高い日本企業においては、入社した社員が健康にいきいきと働いてくれる環境を整備することが、生産性を高めることにつながることが示唆された。


健康経営の効果について講演をいただいた慶応大学・山本教授 



その後は、3つの視点から、健康いきいき職場づくりを進める具体的な方法の紹介があった。

 1つ目に、東海旅客鉄道株式会社 健康管理センター 東京健康管理室の森脇正弘氏より、事例として「健康いきいき職場づくりの取組による成果」と題して発表があった。同社で行われている健康いきいき職場づくりを「健康いきいき職場づくりの8つのステップ※」に整理しての発表であった。同社による8つのステップによる整理としては、以下のとおりである。

STEP1 社長メッセージ「当社の強みの中で最もベースになるのは“人の力”。社員の健康を気持ちを込めて守ることが一番大事」(交通新聞 2014年11月12日)を掲げ、基本姿勢としている。

STEP2 また実行組織としてメンタルヘルス対策プロジェクトチームという場を使っている。

STEP3 健康管理や職場の強みを生かす活動、問題解決などの施策を「安全安定輸送」、「明るくさわやかで活力のある社風の樹立」という経営理念、安全綱領と結びつけて実施している。

STEP4 職場の活力向上プロジェクト(略称:職活)の場を使い周知している。

STEP5 ストレスチェックと健康診断結果の2本柱で評価している。

STEP6 評価内容を踏まえて事業所と意見交換し、健康づくりの視点を含めた職場づくりを勧奨している。

STEP7 具体的な職場で計画を実行している。

STEP8 PDCAサイクルに乗せて健康いきいき職場づくりを実施している。

 また最後にこれらを実施しての課題にも触れ、現場の速さに対応すること、活動を全体に浸透させていくこと、取組のサポートをより充実させること、を挙げられた。

※健康いきいき職場づくり8つのステップについてこちらをご参照ください(PDFダウンロード)



JR東海 森脇様プレゼンの様子


2つ目の具体策として、東京大学大学院 医学系研究科精神保健学分野 准教授の島津明人氏より、「ポジティブ版リスクアセスメントツール ~健康の増進と生産性向上の両立に向けて~」と題してご発表いただいた。島津氏からは、ストレスチェック制度の中でも努力義務となっている集団分析と職場環境改善に触れ、これを高ストレス職場への対策とするのではなく、働きやすい職場づくりによる生産性向上のために活用することが大切だと訴えた。その具体策を「ポジティブアプローチ」として、ストレスチェックの実施がある場合は、それを活用した方法、ない場合は、ポジティブチェックリストを活用した方法について、それぞれ紹介された。島津氏からは、研究室で開発した職場の強みを可視化するエクセルの集計マクロが紹介され、その結果を用いて従業員参加型のワークショップを開催する方法が提案された。こうしたポジティブアプローチは、「職場活性化への5ステップ」としてマニュアル化されており、シンポジウム当日は参加者にも配布された。

 

東京大学 島津准教授プレゼンの様子


3つ目の具体策として、東京大学大学院 医学系研究科精神保健学分野 特任研究員の関屋裕希氏より、「HSEマネジメントコンピテンシー調査票を活用した管理監督者向け教育研修の効果」と題して、ワーク・エンゲイジメント向上に役立つ管理職研修について紹介された。関屋氏からは、これまでのメンタルヘルス対策として、研修(管理職、従業員ともに)は取り組みやすいことが紹介され、その一つとして、HSE(英国安全衛生庁)が開発した部下のストレスを予防する管理監督者の行動(マネジメントコンピテンシー)を軸にした研修の紹介があった。研修効果を測定した研究から、例えば上司の「誠実さ」を高める研修を実施すると、部下のワーク・エンゲイジメントが向上する可能性があることなどが示唆された。


東京大学 関屋研究員プレゼンの様子


 

最後に、2016年健康いきいき職場スターター認証企業3社の授与式とスピーチが行われた。認証企業の取り組みのきっかけとしては、以下のことが挙げられた。

○オムロンヘルスケア株式会社
→社員のストレス状態は決して悪い状態ではない、しかし問題がないわけではない。自社らしい、プラス思考で解決する方法を模索している中、健康いきいき職場づくりの考え方に出会い、取組をスタート。
 

○株式会社富士通マーケティング
→ストレスチェックの結果を活用しながら、PDCAサイクルに則って職場環境改善活動をしたいが、具体的な方法がわからなかったところ、健康いきいき職場づくりの活動を知り、取組をスタート。

 ○NTTデータシステム技術株式会社
 
→「社員がいきいきと働き続けられる職場づくり」を方針に、これまで実施してきた一次予防、二次予防、三次予防の施策から、さらにゼロをプラスにする施策として健康いきいき職場づくりをスタート。

 3社の代表者の方々より、短い時間の中ながら、貴重なスピーチをいただいた。3社のいずれも人事や健康管理の現場の問題意識から、方針を立て、経営層を動かし、また実行計画を策定して社内を動かそうと取り組んでいる。


前方左から、認証委員の一橋大学 守島教授、東京大学 川上教授、東京大学島津准教授
後方左から、認証組織のNTTデータシステム技術様、富士通マーケティング様、オムロンヘルスケア様



認証組織 事務局の皆さんもご一緒に


以上を以って、本シンポジウムは盛会のうちに閉会した。




【健康いきいき職場づくりフォーラム事務局より】

健康いきいき職場づくりフォーラム成果発表シンポジウム2016には、多くの皆様よりお運びいただき、大変ありがとうございました

健康いきいき職場づくりフォーラムでは、昨今の働き方改革の動きも踏まえ、職場は働きやすくまた働きがいのある場所であること、個人も健康でいきいきと仕事を楽しんでいること、これらを積極的に推進して参ります。シンポジウム当日には、2017年の活動計画についてもご案内させていただきました。

 より多くの皆様に、この活動にご興味をお持ちいただき、会員として一緒に取り組んでいただけますよう、この場をお借りしてお願いを申し上げます。


2017健康いきいき職場づくりフォーラム活動のご案内はこちらから

健康いきいき職場づくりフォーラム会員制度についてはこちらから


健康いきいき職場づくりフォーラム会員の皆様には、こちらからシンポジウム資料をダウンロードいただけます(一部非公開の資料もございます)


 

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