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2017年12月26日

「成果発表シンポジウム2017」サマリーをアップしました!

2017年12月11日(月)、伊藤国際学術研究センター 伊藤謝恩ホール(東京大学本郷キャンパス内)にて成果発表シンポジウムを開催しました。
今年度のテーマは『働き方改革の健康いきいき職場づくりへの展開』と題し、学識者から企業人事担当者、健康保険組合と幅広い分野から論客を招聘し、多彩な意見・問題提起がなされました。年末のご多用の折にも関わらず、当日は約280名を超す方々に参加をいただき、盛会となりました。

 本年を振り返ると、政府主導で働き方改革に向けた各種取り組みが推し進められ、ニュースや新聞等でもそのフレーズを見聞きしない日がないといっていいほど「働き方」に関するテーマが日々盛んに取り上げられました。また「働き方改革」や「プレミアムフライデー」が流行語大賞にノミネートされるなど、政府・企業関係者のみならず、世間一般にも広く認知され、各個人が自身の働き方を見つめ直す一年になりました。
 働き方改革の具体策は残業時間抑制やテレワーク、時差出勤など実に多種多様であり、企業・組織はそれぞれの目的や事情にあわせた取り組みをされています。しかし、様々な方策が取り上げられる一方で、働き方改革の真の目的はあまり見えてこないのではないでしょうか。
 私たち健康いきいき職場づくりフォーラムが提案する働き方改革は、その目的を「従業員の幸福」と「組織の生産性向上」に置きます。今回のシンポジウムではこの観点に立脚し、働き方改革・健康経営を生産性向上に活かす手法を探りました。

 冒頭、日本生産性本部理事 原賢一より主催者挨拶、そして東京大学大学院教授 川上憲人様よりフォーラム代表挨拶をいただきました。川上教授からはフォーラム設立後5年間の取り組みについて紹介いただき、更なる健康いきいき職場づくり推進に向けた意気込みをお話しいただきました。


■代表挨拶(東京大学大学院 川上憲人教授)



■主催者挨拶(日本生産性本部理事 原賢一)

 続いて慶應義塾大学商学部教授 樋口美雄様より『働き甲斐、生産性向上に繋げるための働き方改革』と題した基調講演をいただきました。樋口教授からは雇用者報酬と労働生産性の国際比較グラフが示され、大きな注目を集めていました。また日本の場合、労働生産性や経常利益率の伸び率に対して雇用者報酬が追い付いていないこと、この30年間で総労働時間は一見減少したようにみえるが、内実は非正規労働者の増加によるもので正規労働者の労働時間に大きな変化がないことなどを説明いただきました。
 他にも社員の「やる気度」「働きがい度」が他国に比べて著しく低い現状や、未だ投資の中心が有形資産であることを引用され、従業員の能力発揮には職務の明確化や実態・成果の見える化が重要だとの示唆をいただきました。


■基調講演(慶應義塾大学商学部 樋口美雄教授)

 基調講演の後は、日本航空株式会社 執行役員兼人財本部長 小田卓也様より『社員がイキイキと働ける環境を目指して~日本航空が実践する働き方改革~』と題した経営者講演をいただきました。小田様からは日本航空で実践された『ワークスタイル改革』のポイントをご説明いただきました。
 『ワークスタイル改革』とは誰でも活躍のできる生産性の高い職場づくりのことで、同社ではテレワークの推進や社員の意識改革などを進められた点などの紹介がありました。取り組みは実に多種多様で、会議や退社時間の制限や勤務実績の見える化といった勤怠に関することからオフィスのレイアウト変更、更には『ワーケーション』と呼ばれるバケーション中に電話やWi-Fiを利用して部分的に仕事に取り組む新しい働き方といった“日本航空らしい”紹介が印象的でした。これらの取り組みを通じて有給消化率や社員の意識調査で良い結果が表れていることが示され、聴衆の注目を集めていました。


■経営者講演(日本航空執行役員兼人財本部長 小田卓也様)

 1つ目の具体策発表には東京大学大学院医学系研究科 櫻谷あすか様より『ワーク・エンゲイジメントを向上させる手法~Job Crafting~』と題した研究成果の発表をいただきました。ジョブ・クラフティングとは「働く人が自ら働き方に工夫を加えること」でワーク・エンゲイジメントを高める効果があると近年注目が集まる手法です。手法も様々で、作業自体に工夫を加える方法から、人間関係、また認知(考え方)にも拡がります。
 櫻谷様からは、ジョブ・クラフティング計画カードを用いた企業内研修の具体的な取り組み方法やその効果が示されました。結果として、いずれの手法を用いた場合でも研修後の行動が変化しており、ワーク・エンゲイジメントおよび心理的ストレス反応の両方ともに研修後期間が経つにつれ向上していました。


■具体策発表(東京大学大学院 櫻谷あすか様)

 2つ目の具体策発表にはFR健康保険組合 常務理事 奥村芳弘様より『健康保険組合起点で取り組む健康経営』と題した講演をいただきました。FR(ファーストリテイリング)社はユニクロやGUといった有名ブランドを擁し、従業員数も世界各国計7万2千人に上ります。また健康保険組合も3万人近い被保険者を抱える非常に大きな組織です。奥村様からは健康経営やヘルスケア産業(コラボヘルス)の健保組合目線での目的や概要を説明いただいたのち、レセプトや健康診断データといった健康データをどのように活用できるか、その潜在的な可能性が示されました。
 具体的には、レセプトの電子化により可能になった健診結果との突合分析によって、各種疾病ハイリスク者の特定や予備軍の抽出、またメンタルヘルス不調者の予測・把握ができる点が挙げられました。「健康いきいき職場づくり」の観点では、企業・労組が産業保健を基盤に実践する“攻め”の「健康いきいき職場づくり」と健保組合がレセプトデータにより実践する“守り”の疾病一次予防、各主体が協働して攻守両輪の健康いきいき職場づくりを推進することが大切だと説明されました。


■具体策発表(FR健康保険組合 常務理事 奥村芳弘様

 最後に企業事例としてセイコーエプソン株式会社 人事本部 辻正明様より『ストレスチェック職場分析を活用した「職場の健康づくり」推進について』と題した講演をいただきました。セイコーエプソン株式会社様は第5期Active Work Place研究会に参加いただいております。同社では従業員が活き活きと働ける状態を目指す全社方針を打ち出し、メンタルヘルス対策では2000年の研修開始以来、相談体制の充実や再発防止策を実践されています。「職場の健康づくり」にあたってはActive Work Place研究会で学ばれたことを活かされています。特に“仲間と助け合い、喜び合える風通しの良い職場”の実現に向けたワークショップの実施が印象的でした。
 ストレスチェックをリスクのある職場に限定せず、“全体的な施策”と位置付け、労使の共通目標の設定をおこない、その実現に向けて労使協働で風土改革に取り組まれています。取り組みの中で総勢210名・32グループによるグループワークを実施したところ、「メンバーの相互理解」「仲間の支援・協力」が多くキーワードとして挙がりました。現在、その2つのキーワードを軸に、労働組合では “いきいきと働く しあわせに暮らす”ことを目指す中期ビジョンを設定されています。更なる健康いきいき職場づくり推進に向け、風土醸成が着々と進んでいる様子でした。


■企業事例(セイコーエプソン 人事本部 辻正明様

最後に、健康いきいき職場づくりフォーラム事務局より今年度の活動報告と来年度の活動紹介をおこない、盛況のうちにシンポジウムは閉会いたしました。



【健康いきいき職場づくりフォーラム事務局より】

健康いきいき職場づくりフォーラム成果発表シンポジウム2017へ、非常に多くの方々にご参加いただき、大変ありがとうございました。
健康いきいき職場づくりフォーラムでは、昨今の働き方改革・健康経営などの動きも踏まえ、職場を働きやすくまた働きがいのある場所に、また個人も健康でいきいきと仕事を楽しめる、組織・個人の両輪から健康いきいき職場づくりを積極的に推進して参ります。
今後もより多くの皆様に、この活動にご興味をお持ちいただき、会員として一緒に取り組んでいただけますよう、この場をお借りしてお願い申し上げます。


■当日の様子。多くの方にご来場くださりありがとうございました!

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