当日は、ご参加の皆様にSYNQA1階のスペースにご集合いただきました。階段を上がった先のステージ上にプロジェクタでスライド投影される、広々としたプレゼンテーションスペースです。本会の参加者以外の社員の方やお客様も近くを通られ、また、外壁はガラス張りで街の様子も感じられる、開放的な空間をご提供いただきました。
○イトーキ様プレゼンテーション
初めに、今回場を提供くださった、株式会社イトーキ ソリューション開発本部 ソリューション開発統括部 Ud&Ecoソリューション開発部 部長の八木佳子様より、オフィスと健康に関するお取組みのきっかけや内容についてのプレゼンテーションをいただきました。
■ イトーキ様での研究内容とお取組みについてご紹介いただいた八木部長様
八木様が所属されるUd&Ecoソリューション開発部では、イトーキ様の企業コンセプトにあらわされる「人も活き活き 地球も生き生き」を具体化されるアイディアを考え、実践されています。形ある「オフィス環境」を提供される企業ならではの発想で、社員の健康増進と言っても単に「健康」を求めるのではなく、「仕事もはかどり、健康にも良い環境づくり」に力を入れています。そして、環境を変えることで人の行動が自然に変わる、そのための仕掛け作りをなさっています。
例えば、昨今多くの企業が「コミュニケーションスペース」作りに取り組んでいますが、場所だけ作っても往々にして失敗してしまいます。そのスペースに自然に人が集まり、対話が生まれるようにするために、例えば執務スペースと区切らず、かつ見えすぎない(ちょっと見える)ような空間づくりをしたり、テーブルにタッチパネル式の画面を設置し、流される情報を会話のきっかけにしたり、という環境づくりの工夫が大切だそうです。また、木材を使った場所の方がコミュニケーションが上がるなど、素材による感じ方なども環境づくりの工夫につなげられるそうです。
イトーキ様でも、こうした活動に取り組まれる際に最初に行ったのは、社員の皆さんがどのようなオフィスにしたいか、という理想の職場環境のアイディア出しからだったそうです。職場の改善や改革といった大きいテーマでも、もとは一つひとつのアイディアからスタートするものなのですね。
なお、イトーキ様は経済産業省の委託事業「健康経営に貢献するオフィス環境の調査コンソーシアム」において、「健康経営オフィスレポート」の作成に携わられています。レポートはこちらからダウンロードいただけます。
「健康経営オフィスレポート」のダウンロードはこちらから
○イトーキ様オフィス見学
引き続き、イトーキ様のショールームも兼ねたオフィスフロアを見学させていただきました。ショールームといっても、れっきとした同社のオフィス空間であり、社員の方々が普通にお仕事をされている、まさに職場です。しかし、その職場には天井から下がった照明の上に緑(本物の植物です)があふれていたり、様々な人が交差するように回廊式の動線があったり、立ち会議スペースがあったり、また木の長机の執務(会議)スペースがあったりと、「こんな職場で働いてみたい」と思わせる場所でした。
イトーキ様のご説明によると、例えば照明も、昼間は明るく、定時後は少し暗めにするなど、時間を意識させるために活用されています。フリーアドレスも取り入れていますが、完全フリーではなく、「ハイブリッドアドレス」として曜日によってチーム単位で座る日を作るなど、組織内のコミュニケーションも意識できるような仕組みを取り入れています。そのほか、「マインドフルネススペース(沈思黙考スペース)」といって、集中して仕事がしたい人、ちょっと一人になりたい人のためなどに用意された、掘りごたつ式の個別の空間(しかし完全に個室などではない)もありました。
オフィスにおけるファシリティはなかなかすぐには変えられるものではないかもしれませんが、アイディアを出し合って、今あるオフィス資源のなかで工夫できることはいろいろあるように思いました。
余談ですが、イトーキ様では所属や役職に関係なく、職場環境を良くするための運用の工夫があるそうです。週に一度、部署の全員で朝一番にお掃除をする日があって、役職者の方も同じようにお掃除をなさるとのこと。不要な資料やいつまでも置いてある荷物などは注意されるそうです。このように、自分たちのオフィスを自分たちでメンテナンスする、ということも、オフィスに対する意識の転換になるのではと思いました。
○ワールドカフェ形式でのメンバー交流
さて、後半はワールドカフェ形式で、メンバーの皆さん同士が語り合う時間です。今回もおよそ半数は初ましてとご挨拶される方々でした。それぞれ、ランダムにお掛けになったグループの中で自己紹介から始まり、本日の話題に入って行きました。
■ワールドカフェの様子
今回の最初のテーマは、イトーキ様訪問という場にふさわしく「あったらいいなと思うオフィス環境とは?」とさせていただきました。
様々に挙げられたアイディアとしては、
・人が交流できるスペース
・フィットネスルーム
・集中できるスペース
・リラックスできるスペース
・窓が広いオフィス
・防音スペース(叫べる?!)
・犬や猫がいるスペース(癒し?!)
などなど、いろいろありました。面白いですね。
そこで、「あったいいな」を考えていただいた後、二つ目のテーマは「今ある職場できる工夫は何か?」としてお話し合いをいただきました。多くのグループで耳にしたお話としては、「喫煙ルームに代わる、コミュニケーションスペースを作りたい」というものでした。昨今進む喫煙対策により、喫煙者は減少し、また社内の喫煙スペースも無くす企業が増えていますが、多くの人がそうした場を有効なコミュニケーションスペースだったと感じているようです(もともと非喫煙者の方も含めて)。世代や部門を越えて人が集まり、かつ仕事時間中でありながら仕事から離れ、休憩し雑談することが自然に許容される場所。そこで新しいアイディアが生まれたり、非公式でありながら物事がスムーズに決まったりする、ということは喫煙ルームという場所では過去に多くあったようです。
これに代わる場所がなぜできないのか。実際には、多くの企業では、「コミュニケーションスペース」や「リフレッシュルーム」という場所自体は確保されていることもわかりました。問題は、これが活用されていない、人が来ない、ことのようです。その原因として多くのグループで話が出ていたのは、「さぼっていると思われる」、「罪悪感がある」などの意見でした。こうした意見がある中で、スペースの利用を活性化するには、休憩や無駄な時間の大切さをトップダウンで落としてもらうことが必要、という話が出ていました。
ちなみに、このテーマでは、以前フォーラムの定例セミナーでも同様の話題が出ていました。その時には、例えば、
・コーヒーを淹れて良い香りを漂わせ、人に集まってもらう
・タブレットを設置し、新入社員の紹介など、共通話題となるような情報を流す
・コピー機や備品置き場などの場所に設置し、だれでもついでに一休みができるようにする
などのアイディアが挙がっていました。
「喫煙」という暗黙に許容された休憩の「目的」がもはや薄れている(そもそも無かった方も多いと思います)中、これに代わる目的を新たに共通化するのは難しいのかもしれません。やはり、ここにも環境づくりの工夫を丁寧にして行かなければならないのでしょう。
皆さんは、この話を聞かれてどう思われるでしょうか?
上手く行っている事例をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひご意見をお寄せいただけると幸いです(健康いきいき職場づくりフォーラム ikiiki@jpc-net.jp)。
最後は、この職場訪問会で見たこと、話し合ったことについて、心に残ったこと(新しいアイディアや考え方、疑問など)を付せんに記していただき、今日の記録としていただきました。
ワールドカフェでの模造紙はこちらからご覧いただけます(フォーラム会員の皆さんのみ公開中です)
今回、職場訪問会のホストとしてメンバーを迎えてくださいました、株式会社イトーキ ソリューション開発本部 ソリューション開発統括部 Ud&Ecoソリューション開発部 部長の八木佳子様、同健康ソリューション開発室の渡邉治子様、中野耕助様には、準備から当日までお世話になりまして、大変ありがとうございました。この場をお借りして御礼申し上げます。
さて、次回は10月12日(木) 第3回職場訪問会inサイボウズ様です。ご本業としてグループウェアの開発をなさっている同社の人事制度が大変、面白いです。100人居れば100通りの働き方がある、そのためには100通りの人事制度があってよい、という考え方の下、多様な働き方を支援する様々な仕組みを持っておられます。2015年に本社移転され、新しく日本橋に構えられたオフィスにお伺いいたします。
お申込み受付は7月上旬以降を予定しております。どうぞ、お楽しみに!