2015年05月18日
5月定例セミナー「サマリー・当日資料(会員限定)」公開しました
2015年5月11日、健康いきいき職場づくりフォーラム定例セミナー「改正労働安全衛生法と健康いきいき職場~法改正対応を超えて~」が開催され、多くの方にご参加いただきました。また、今回は当フォーラム初の試みとして、大阪会場と回線をつなぎ、サテライトでの放映も行いました。 今回セミナーから、より充実した内容でお届けすべく、開催時間を30分追加し、前半では今年12月に施行される改正労働安全衛生法と健康いきいき職場づくりの連携について、後半では昨年度より開始した「健康いきいき職場スターター認証」制度の活用事例~富士通株式会社とMMCテクニカルサービス株式会社~をご紹介しました。 まず最初に、「改正労働安全衛生法と健康いきいき職場づくり」と題して、東京大学大学院の川上憲人教授から、いわゆるストレスチェック制度をどのように健康いきいき職場づくりに活用するかについてのお話をいただきました。今回制度の検討会等に委員としても参画された川上教授は、法改正の内容の説明に先立ち、「今回努力義務ながら導入される職場環境等の改善は健康いきいき職場づくりの主要な方法論」であり、「ストレスチェックの項目は事業場でポジティブな項目を付け加えることも可能」であることを指摘し、ストレスチェック制度を健康いきいき職場づくりに活用することで、「問題探し」の視点から「問題解決」に視点を転換し、経営面でも成果が得られることをご説明されました。 また、実施の際にはストレスチェック制度だけが孤立して動くのではなく、心の健康づくり計画全体の中で位置づけ、衛生委員会などでの審議を経て、PDCAサイクルで活動を進めることが重要とお話しになりました。そのため、職場改善活動も「事業者や安全衛生管理者が行う職場改善活動」「管理監督者が行う職場改善活動」「従業員参加型の職場改善活動」に分かれること、より前向きな参画を得るためには「問題探し」だけではなく、ポジティブな視点の導入や、職場資源の向上、人と組織の活力向上の視点~健康いきいき職場づくりの視点~が不可欠とまとめられました。 次に、法学の観点で同じく検討会等に参画をされていた近畿大学の三柴丈典教授より、「職場のメンタルヘルスと法~典型的な問題事例を素材として~」と題し、法改正後の産業現場で想定される、不調者が発生している事例への対応法についてご講演いただきました。三柴教授からは「ストレスチェックを実施すると面接の対象になり、個別対応を要するケースが出てくるが、このようなリスクに適切に対応することがいきいき職場推進の上での安心感につながる」という視点でお話をいただきました。実際に発生が予想される事例を用いつつ、復職判定、本人の病状の申告、職場配置、内定取り消し、個人情報の取り扱いについて、安全配慮義務、信義則、障碍者雇用、プライバシー権などへの考慮をしつつ、会社側のスタンスとしては、「手続的理性」(合理的な手続策定と公正運用)、具体的には「専門性」(産業医・主治医・カウンセラー・人事担当者など専門家の関与)、「民主性」(衛生委員会や復職判定委員会などへの関係者の関与)を尽くすことが重要になるとご説明いただきました。 この後、川上・三柴両氏による共同討議・会場を交えての質疑応答を行いました。 (質疑内容については会員限定で公開。メニューより会員ログイン後に質疑応答と当日の資料をご覧いただくことが可能です)
第二部として、昨年度開始された「健康いきいき職場スターター認証」制度の説明が事務局より行われました。本認証制度は健康いきいき職場づくりを推進するための方法論や体制づくりの支援を行うために策定されたもので、「これから取り組みを始める組織」も、「これまでの取り組みの棚卸をする組織」も、ともに利用できるため、今回法改正をより積極的に活用する観点でも非常に有効であることが説明されました。また、認証取得はあくまで「スタート」であり、その後の取り組み支援を事務局が行うことや、認証組織のコミュニティである「スターターズクラブ」においても、相互アドバイスなど横の連携が確保されていることも合わせて説明されました。
(2015年認証スケジュール) 4~8月 申請期間・申請後書類審査 6~8月 面談(申請組織ご担当者-事務局) 10月ごろ認証委員会による審査 10月末 認証結果提示 12月 成果発表シンポジウムでの認証式・認定証・ロゴなど授与 1月以降 各種実践活動支援
認証実践事例の1組織目として、富士通株式会社の事例を同社健康推進本部の玉山美紀子様よりいただきました。取り組みを進めるにあたっては、まずヘルスセクターである健康推進本部の意識改革を進めるべく、目の前の不調者だけではなく、グループ全体の社員及びその家族の健康保持増進を顧客ととらえ、しかも「病気を持ってもうまく付き合い、働き、人生を充実させるために健康に関する知識・情報を抵抗することが重要」と再定義されたそうです。さらに、人事や経営などのノンヘルスセクターとの連携を進めるため、例えばストレスチェックの見せ方の工夫や、活性化軸の導入、地域性や職種などを加味したきめ細やかな分析などを通じ、徐々に理解を深めてもらっております。また、今後は日本生産性本部などとも連携しつつ、グループ各社への発信にも乗り出していくことを進めるそうです。認証取得を通じ、自職場の資源の棚卸や、グループ各社への訴求効果があり、単なる法令化対応だけではなく、組織活性化・生産性向上・職場の自立など、まさに健康いきいき職場を目指す活動を通じて、グループでの認証を目指すと結ばれました。 2組織目として、MMCテクニカルサービス株式会社の事例をCSR室長の黒柳正美様よりお話しいただきました。同社は、三菱自動車の100%子会社という制約ある環境下で、国内生産伸び悩みや先行き不安感からくる潜在的なメンタルヘルス問題への対応を迫られていました。そのような中、経営改革を推進し、10年後の「ありたい姿」を全員で主体的に実現し、仕事にやりがいや生きがいを感じてもらえる状態を作るべく、健康いきいき職場づくりを「車の両輪」と位置付けました。認証をきっかけに、社内での認定証掲示、認定時のフィードバックレポート(認定理由・改善ポイントを記載したレポート)を基にした活動の質の向上、社長タウンホールミーティング、係・班、部・課、社・事業所各レベルでのいきいき施策分類、社内推進委員会の選定、モデル職場でのワークショップ実施、各職場でのいきいき活動掲示板など、「走りながら考える」の方針の下、現在進行形で活動を行っているそうです。 この後、玉山・黒柳氏に加え、川上・三柴両氏、さらに認証医院であり、スターターズクラブへのゲスト参加もされている東京大学大学院准教授の島津明人氏も加わった共同討議・会場を交えての質疑応答を行いました。
(質疑内容については会員限定で公開。メニューより会員ログイン後に質疑応答と当日の資料をご覧いただくことが可能です)
終了後は、会員限定のコミュニティを開催しました。本コミュニティには登壇者もご参加いただき、本編で聞けなかったことの確認、会員間の情報連携などのやり取りが活発に行われました。
次回開催は7月30日です。
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