2016年06月01日
5月定例セミナー「サマリー(一部会員限定)」を公開しました!
去る2016年5月16日、健康いきいき職場づくりフォーラム定例セミナー「認証制度を活用した健康いきいき職場づくり」が開催され、多くの方にご参加いただきました。この日は、当フォーラムが2014年より開始した「健康いきいき職場スターター認証」の概要、2組織の実践事例、隣接した価値観を持つ認証制度としての「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」のご案内が行われました。
「認証制度を『健康いきいき職場づくり』にどう位置づけられるか?」(島津明人氏) まず最初に、島津明人氏(東京大学大学院医学系研究科准教授)より、「認証制度を活用した健康いきいき職場づくり」と題して問題提起をいただきました。そこでは、職場のメンタルヘルスや活性化についての国際潮流~すなわち、単なる疾病予防だけではなく、個々人の能力発揮や生産的で充実した働き方につながること、健全なビジネスには健全な労働者が不可欠であること~が、WHO(世界保健機関)やタイの取り組みなどを例に挙げられました。そのうえで、当フォーラムが運営する「健康いきいき職場スターター認証」が、いきいき職場づくりの実践に持つ意味、つまり、共通の目標を持つことで、様々な関係者の協力を得やすくなり、それが組織全体で職場資源を向上させることにつながることをご紹介いただきました。また、同制度が ・すでに取り組みに着手している組織には・・・ ⇒取組状況を評価し、さらなる向上の起点になる ・これから推進する組織には・・・ ⇒何をどのように取り組むかの目標設定になる ことも言及いただきました。
「いい会社を作るうえでは、「論語と算盤」が大事だが、「論語」が先にある意味を考えたい」(藤井正隆氏) 続いて、「人を大切にする経営」という観点で認証活動を行っている事例として、「人を大切にする経営学会」事務局次長の藤井正隆氏より「『人を大切にする経営』が企業価値を高める」と題してお話しいただきました。藤井氏には、同学会の事務局を務め、自身も組織開発コンサルティングを行うお立場より講演いただきました。藤井氏によると、リーマンショックや東日本大震災以降の価値観の変動により、法政大学の坂本先生が提唱する「人を大切にする経営」の観点がより注目を集めるようになったといいます。そして、長期的に業績が高く、安定的に運営される会社の特色を以下のようにまとめます。 1)正しい目的の経営 2)社員とその家族を大切にする経営 3)仕入先・協力企業を大切にする経営 4)現在顧客と未来顧客を大切にする経営 5)社会的弱者とりわけ障がい者雇用を大切にする経営 6)急成長・急拡大、流行・景気を追わない経営 7)特定の企業や商品に過度に依存しない形影 8)価格競争をしない経営 9)新しい価値を創造・提案し続ける経営 10)財務力を大切にする経営 11)全員参加のガラス張り経営・ロマン経営 12)地域貢献・社会貢献の経営 そのうえで、「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」の審査基準をご説明いただきました。 (参照http://taisetu-taisyo.jimdo.com/)。その選考過程で明らかになったこととして、以下があるといいます。 ・規模が大きいとできないということではない ・社員や仕入れ先、協力会社に無理を強いることは望ましくない ・倫理性と収益性、つまり「論語と算盤」の両方が大事だが、先に来るのはあくまで論語 ・一過性ではなく継続的な活動にしていくためには、ワーク・エンゲイジメントのよういきいきの概念も大切 そして、「いい会社」を増やすために今後も活動を進めていきたいとして話を結ばれました。
「ホンネの話し合いをいかに増やしていくかが活動のポイント」(金井田弘美氏) 続いて、実践報告として、金井田弘美氏(株式会社神鋼エンジニアリング&メンテナンス)より、「認証を起点とした『健康いきいき職場づくり』への道筋」と題して、同社での実践の現在をお話しいただきました。同社は、2015年にスターター認証を取得し、現在進行形で取り組みを進めており、その経緯や現状をお話しいただきました。 同社は、2011年よりメンタルヘルス推進体制の構築を進め、復職支援や教育・サポート体制を整える中、ストレスチェック後のフォローをどういう風にしていくのがよいかを考えることから、活動の深化が始まったといいます。具体的には、従来の二次・三次予防に加えて、一時予防への対策を進めるべく、管理監督者対象の職場環境改善活動として「車座ミーティング」を行っているそうです。これは、係長・職長など現場の管理監督を行う方を集め、ホンネベースでの話し合いを継続的にする場として設けたとのことです。その効果として、現場の悩みや問題意識の吸い上げができたことと、現場の創意工夫を人事総務部門が知ることができたことがあると金井田氏は言います。また、ストレスチェックで得られた結果を基に上司への働き替えを行うこと、認証取得時のフィードバックレポート(認証自由の詳細説明およびさらなる改善のための方法論を分析・提案するツール)を活用し、部門間連携、社内外への発信、クレド策定、新入社員研修の内容見直し、方言を交えたラジオ体操活動など、「コストをかけなくてもできる職場資源向上活動」を様々に展開されています。
「認証を活用しつつ社内外へのアピールへ」(西田昌人氏) 次に、認証取得を活用しながら活動を進めてきた事例として、西田氏・戸政氏(西日本旅客鉄道株式会社)より、「認証後2年間の取り組み~その成果と課題~」と題してお話いただきました。同社は、2014年度に認証を取得され、その後の活動を進める際にも活用いただいてきました。 西田氏・戸政氏が所属される健康増進センターを中心にして、同社のいきいき活動は推進されています。そういった環境下で、申請のメリットについて ・職場改善活動への自部門以外での理解が進む ・連携すべき他部門が見えてくる ・申請による社内認知度の向上 ・取り組みの優先順位向上 ・担当のモチベーションアップ などがあったといいます。そして、その成果として中期経営計画や年度基本方針へのいきいき向上関連の活動が明記されるようになったといいます。 その取り組みが特に進んでいるのが広島健康増進センターです。その取り組みを推進する戸政氏は、保健師を中心とする職場改善活動や、現場の担い手たる社内ファシリテーター養成、改善事例集の集約などの各種活動を進めることで、ストレスチェック時の各種数値の改善が成果として出てきたと述べます。ただし、ファシリテーターのフォローや職場全体の巻き込み、他地区への浸透、人事労務部門や管理者との連携、社内の同様の取り組みとの競合、担い手の人員不足など、まだまだ課題を抱えた中で活動しているとのことでした。
このあと、2016年度のスターター認証の概要説明が事務局から行われ(概要資料はこちらをクリック)た後、登壇者によるパネルディスカッションとして、会場からの質問も受けつつ様々な討議が行われ、認証の活用法、「いい会社」への道筋について、自職場でも取り入れられそうなものを見出すための深堀りが行われました。なお、質疑内容や当日資料は会員限定で公開しています。メニューより会員ログイン後にご確認ください。また、終了後に会員限定のコミュニティが行われ、登壇者も交え、より突っ込んだ質問や、個別具体的な相談など、他では聞けない様々なやり取りが行われました。
次回開催は7月22日です。テーマは、「サービス産業現場における健康いきいき職場づくり」です。業種は異なっても、顧客やステークホルダーの満足向上を目指すためには、多かれ少なかれ各社ともサービス業的要素が求められるようになってきた中、実際にサービス現場の最前線ではどのように「いきいき」の向上が行われているのかに迫ります。ご期待ください。
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