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2020年07月28日

「第4回新型コロナウイルス緊急対応セミナー」サマリーをアップしました!

2020年7月17日(金)、「第4回新型コロナウイルス緊急対応セミナー」を開催いたしました。同セミナーは、第3回に引き続きオンラインセミナーとして実施され、約40名もの方々にご参加いただきました。第4回となる今回は、『ポストコロナ下の組織のあり方を考える―組織像、企業法務、社員教育を中心に』をテーマに据えて行われました。学識者および企業の健康経営担当者による講演や質疑応答では、多様な観点から“ポストコロナ”での組織の在り方や今後の新しい働き方に関する問題提起がなされました。
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴い、多くの企業においてテレワークなどの新しい働き方への移行が進んでいます。ここ数か月間の急激な働き方の変化が、従業員や組織に大きな影響を与えていることは言うまでもありません。 
 第4回となる今回は、ポストコロナ下での組織の在り方について、組織論や法律、オンライン教育といった観点から検討しました。


 冒頭、一橋大学大学院経営管理研究科 准教授 佐々木将人氏より、『調査から見えるポストコロナの組織像』と題してご講演いただきました。

  今年4月実施の人事担当者を対象とした調査「新型コロナウイルス感染症への組織対応に関する緊急調査」の結果より、新型コロナウイルス感染拡大により、事業活動や現場でのコミュニケーション等に負の影響があったこと、さらに組織としては新たな人事施策や新部門の設置などの対応がなされていたことをご解説いただきました。
 それらの組織での対応の成否を分ける概念として、「複雑かつ変化する環境下で組織が適応できる能力」を指す「組織レジリエンス」をご紹介いただきました。レジリエンスの高い組織では、新型コロナウイルス流行前から既に様々な組織策を投じている場合が多く、テレワーク環境といった新しい環境に対する適応力が高い傾向にあるそうです。レジリエンスを向上させるためには、"経営資源の充足度"と"社内のコミュニケーション構造"が鍵となることをご指摘いただきました。
 これらを踏まえて、今後の組織設計においては、①事業および組織の在り方の変化から学ぶ姿勢であること、②”職場の距離は遠く家庭の距離は近く”というコミュニケーションの変化を、ワークライフバランスの向上へとつなげる視点を持つこと、③対応力や適応力などのレジリエンスが高い組織を目指していくことが重要であることをご提言いただきました。


 続いて、近畿大学法学部 教授 三柴丈典氏より、『新型コロナ労務に関する法律論』と題してご講演いただきました。

 はじめに、新型コロナウイルス感染拡大の影響下における労務問題を考えるにあたっては、「不可抗力であるのか」、つまり「使用者側が何らかの工夫をすることで回避できる問題であるのか」が重要であるとご説明いただきました。さらに、新型コロナウイルス関連の問題においては"エビデンス・ベース"が困難な局面も生じるとし、労使と専門家を交えた"コンセンサス・ベース"の対策が求められるとご提言いただきました。
 その後、Q&A方式でさまざまな労務上の問題における対応のポイントについてご解説いただきました。「糖尿病などの基礎疾患を持つ従業員が業務上で新型コロナウイルスに感染し、重症化した場合における、使用者の責任は?」という問いに対しては、「安全配慮義務は"合理的な手段"を尽くす義務であり、"結果の担保"は必ずしも求められない」とご解説いただきました。その他にも、業務中や通勤時に新型コロナに感染した場合における労災認定、在宅勤務での復職者対応、派遣労働者が新型コロナ疑いであった場合の対応など、実践的な内容についてご解説いただきました。


    続いて、北海道大学情報基盤センター 准教授 重田勝介氏より、『オンライン学習による組織における人財育成の課題と可能性』と題してご講演いただきました。

  冒頭に、近年、オープン・アクセスやオープン・サイエンス、オープン・エデュケーションといった言葉に代表されるように、高等教育のオープン化が世界的に進んでいることをご紹介いただきました。なかでも、オープン・テキストブックを用いたオープン・エデュケーションは、教材共有を行うことから「①国際教育協力」、著作者以外の編集が可能であることから「②教育改善」、さらには学校教育を生涯にわたって分散させようとする理念である「③生涯学習(リカレント教育)」を実現することが容易になる、といった意義があるとのことです。
 従来のOJTが困難である新型コロナウイルスによる影響下では、オンライン学習の普及が期待されているとし、今後さらなる展開が見込まれることをご指摘いただきました。既存のリカレント教育における課題として、①幅広い講座内容の提供、②学習効果の向上(学習意欲・学習継続・学習時間)、③能力証明の活用の3点を挙げてご解説いただきました。


    最後に、株式会社富士通ゼネラル 健康経営推進室 玉山美紀子氏より、企業での取り組み事例についてご講演いただきました。

 新型コロナウイルス感染拡大や自然災害等のこれまでの経験値では対応できない出来事が起きているとし、社員の不安感や疲弊感に対して、人事・産業保健・労働組合で連携対応していくことの重要性を痛感したとお話しいただきました。
 それらを踏まえた"Beyondコロナ"の施策として、①人・拠点・会社とのつながりを感じ、孤独感を抑制し一体感を醸成することを目的とした、社員間でビデオメッセージの”バトン”を行うプロジェクト、②海外や全国各地の拠点にいる社員への学びの機会の提供を目的とした、ショートタイム・オンラインセミナーを企画していることをご紹介いただきました。
 今後は、社員がいきいきと働き、会社に依存することなく自立した幸福な生活を築くことを支援していきたいとお話しいただきました。


    その後、チャット機能を用いた質疑応答の時間では、活発な意見交換がなされました。

   「組織のレジリエンスに対して労働組合の有無は影響するのか」という質問に対しては、佐々木先生より「紹介した調査では労働組合の有無については測定していない。規模の大きい組織ほどリソースが整っているという傾向は認められている」とご回答いただきました。

   「オンライン学習における効果測定の在り方」についての質問に対しては、重田先生より「基本的にオンライン学習では記憶を想起させる課題やレポートといった評価ツールがセットとなる。"頭では分かっているけれどもできない"という状態像を捉えるには、仮想の状況を想定させた上で問うか、継続的に習得度を追っていく必要がある。"自分のものにする"ほどの学習効果を得るためには、対面学習と組み合わせることも重要である」とご回答いただきました。

  「新型コロナの影響下でなかなか余裕を生み出しにくいなかで、効率性ではなくレジリエンスを高める方向性に進むためには」という質問に対しては、佐々木先生より「なぜ余裕を生み出しにくいのかに依存するだろう。まずはどこに進むべきなのかをはっきりさせることが大事である」とご回答いただきました。さらに、玉山様より「健康経営はいわば"なくても良い"部署だが、それでもやってほしいという経営側の思いがあった。当初は否定的な意見もあったものの実際に取り組みを始めると高評価。会社のトップの考え方を社員に地道に伝えていくことが大事だと感じている」とご回答いただきました。

  「今後の組織像」についての質問に対しては、三柴先生より「健康・労務・新型コロナ対応のすべてに関わる問題の一つに"誰を切るか"という問題がある。評価するにあたっては、"意欲"と"能力"の観点から、情報を立体的に(量的かつ質的に)掴み、対話と価値選択を行うことが重要である」とご回答いただきました。


   最後に、健康いきいき職場づくりフォーラム事務局より、開催を予定している定例セミナーについてご案内し、盛況のうちにセミナーは閉会いたしました。

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